札幌までの旅

(1日目)
 朝5時に目覚ましをセットして、6時に出発するつもりが1時にはパッと起き上がっていた。もう一度眠ってみようとしたが、目がさえていたのでそのまま出発の準備をした。前夜にあらかた準備し終えていたのでスムースに支度は調った。
 2時半に自宅を出発。辺りは真っ暗。通行人も対向車もいない。30分走れば峠越えの道にさしかかる。往路では最大の難所である。路面が凍結している可能性は大きい。
 案の定、峠の頂上付近ではかすかに路面が凍結していた。スピードを緩め、トロトロと走る。対向車も後続車も全くいない。周囲は全くの暗闇である。ヘッドライトだけを頼りに峠を下っていく。まもなく道は平坦になり、最初の休憩ポイントのコンビニに着く。ここまでで約1時間経過している。予定通りだ。
 そこから内陸を通り、丸瀬布を目指す。細かく曲がりくねった道もある。眠気がかすかに襲ってきた。途中のコンビニで一休み。珈琲で眠気を飛ばす。
 途中で白滝というところを通る。ここはJRの鉄道でも乗降客が少なく、周囲に何もないことで知られる「秘境駅」が続く。民家は極めて少ないが、確かに駅はある。そのうちの一つ「旧白滝」駅で車を駐めてしばし観察。ここで「駅寝」をするのは至難の業だと感じた。
 ようやく高速道路の入り口にたどり着く。比布を経由して旭川から札幌方面へ一直線。のはずが、単調な運転にまた眠気が襲ってくる。札幌まで残り約100kmの地点のパーキングエリアで仮眠することにした。30分の睡眠。その後はすっきりとする。

 ホテルに車を置いて、早速今回の旅の目的を開始する。歩いて札幌駅方面に行く。ススキノを超えてタワーレコードのあるビルに着く。しかし、先に昼食を済ませることにする。札幌出身の知人からハンバーグレストランが近くにある。
 残念ながら味の方は、知人の説明通りではなかった。道南の名店で食べた極めて美味しいハンバーグとどうしても比較してしまう。
 タワーレコードに戻る。まず買うCDは決まっている。宮沢和史率いるGANGA ZUMBAのライブ盤である。帰宅後に聴いているが、ゲストも参加してのライブはなかなかいい。ラストにボーナス曲としてTHE BOOMも参加している。THE BOOMの待望の活動再開は今年らしい。その他、Peter, Paul & MaryとMelody Gardot、Chick CoreaのCDを買う。
 さて、いよいよ本屋巡りを開始する。JR札幌駅西すぐの紀伊國屋書店である。今年で開店4年目とのことだが、ずっとホームグラウンドにしている書店である。やはりAmazonなどのオンライン書店では見つけることのできない本があったり、オンラインでは味わえない感動がある。僕は書店に居るとき、アドレナリンが出ていると思う。2階は書棚の入れ替えがあったようで、以前と少し違う。検索システムがうまくいかなかったようで目的の本を探すのに、書店員ともども苦労する。
 本を買い求め、配送の手続きを完了したら2階にあるイノダコーヒーでアイスコーヒーを飲む。京都の名店が札幌にも出ている。味はさすがで、ほのかな酸味と苦味のバランスが絶妙である。幸福感とはこのことを言うのだろう。
 紀伊国屋から今度はジュンク堂書店に向かう。最近オープンしたばかりで、行くのは今回が初めてである。しかし、ジュンク堂の神戸三宮店や大阪堂島本店などは帰省時の行きつけであり、期待は大きい。
 地下2階、地上4階の売り場である。上がったり下がったりの煩雑さは否めないが、棚の見やすさや雰囲気はいい。期待通りの探しやすさ、快適空間である。ここでも本を探す。短歌や俳句の棚が充実しているのは嬉しい。個人の歌集も興味を引かれるものがあり、1冊求めた。
 2店とも、ちょっと残念なことがある。各出版社が発行しているPR誌を置いていないことだ。どちらの店でも尋ねたが、ほとんど置いていなかったのは残念である。大した問題ではないが、ホテルで読むにはちょうどいいのである。
 夕食は大丸の地下で買った和惣菜の弁当を食べる。なかなか美味しかった。

 風呂から上がると、疲れがどーっと出て何もしたくなくなり、音楽を聴きながら眠りについた。どういうわけか、僕はiPODを付けっぱなしで眠ることは少ない。いつの間にか
自分で電源を切っているのである。
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(2日目)
 6時起床。すぐに頭が痛いのと、体がかすかにだるいのに気づく。風邪だろうか。頭痛にはバファリンが効く。この薬との相性はいいのでいつも鞄に入れているつもりなのだが、切らしている。どこかの薬局で買わねば。あるいはそれまでに頭痛が収まってくれればいいのだが。
 今日の目的は北海道立近代美術館に行くことである。「セザンヌ主義」という、ポール・セザンヌと彼に影響を受けた芸術家の作品が展示されている。僕は全く絵心というものがなく、小学校低学年からペンキで塗りたくったような絵しか描けない。そもそも高校ですら芸術科目の選択が音楽だったぐらいだ。そうなると、中学校以来まともに絵を学んでいないことになる。
 しかし、観る方は大好きだ。作品の正面に正対する。細部まで気になることもあれば全体をスキャンしていく見方もする。絵画で得られた情報はわずかに自ら写真を撮るときに生かされているかもしれない。強くは意識しないが、好きな構図というのがあり、気がつけば似た傾向を持つ写真ができていたりする。
 頭痛を抱えながら展示を見ていく。油彩からエッチング、少ないが写真もある。それらを一つ一つ記憶の中にイメージとしてスキャンしていく。人物画はポートレイトと裸体の群像が多い。影響を受けた人たちもセザンヌの構図に似ている。
 人物と風景でようやく全体の3分の2ぐらいだろうか。ここで自分の中に起きたある異変に気がつく。静物画の半分ぐらいまで来たところで、イメージが心の中に入ってこなくなった。電子機器の記憶媒体が容量一杯になったのに似ているし、コップの水が表面張力でようやくこぼれずに済んでいる状態にも似ている。
 頭痛は相変わらず続いている。しかし、オーバーフローを自覚するまでは頭痛のことは忘れていた。セザンヌ展のコーナーを出て、休憩スペースの椅子に座り、水分補給をする。まだ館内に展示物はあり、それらも観ないと勿体ない。しかし、これ以上は入らない。読書ならば栞を挟んで本を閉じればよい。DVDならば静止ボタンを押せばよい。でも今回はもう無理と判断した。精神的にお腹いっぱいなのである。図録とポストカードを買って、
地下鉄の駅へと急いだ。
 外の案内を見れば4月からの特別展示は佐伯祐三展とのこと。泊まりがけで来ても観たいが、どうしよう。
 この日は暖かかった初日とは一変して雪が降って風も冷たかった。雪は真冬の乾いた雪ではなく、水気を多く含んだ重く大きな雪粒である。さて、どうしようと考えたときに、やはり今回の旅の大きな目的を完遂しなければならない。大通公園近くのジュンク堂書店に再び向かうことにした。
 2回目でもあり、どの階にどんな本が置いてあるかは大体把握した。英語学関連と短歌・俳句関係で見落としがないかと探しに行ったのだが、意外にも三谷幸喜のエッセイ集をすっかり忘れていたことに気がついた。
 外に出れば雪が降り続いている。傘を持つのが煩わしいのと、真冬の雪は軽いので傘を持たない生活を続けていた。しかし、この日のような天気ではやはり傘は要る。持って歩くのは煩わしい。メアリー・ポピンズのように飛んで行ければ話は別だ。
 ジュンク堂近くの薬局で葛根湯とバファリンなどを買って移動開始。時計台の前を過ぎていく。観光客がベストポジションから写真を撮ろうと密集している。ビルに囲まれた時計台をすっきりと撮る角度は限定されている。
 ロフトと無印良品で買い物をする。文房具中心。さしあたって珍しいものはないが、靴下を買う。履き心地のいい靴下の寿命が来ていたためである。
 昼食は札幌駅近くのお好み焼屋へ。有名チェーン店である。まともな関西風のお好み焼を道内で求めるのは難しい。「こんなんお好みとちゃう!」と叫びたくなった店がいくつかあり、道内でお好み焼を食べることは半ばあきらめていたのだが、ここはひとまず安心できる。ただ、モダン焼のソバがちょっとべっちょりしているのはマイナス点。パリパリしている方がいい。
 駅前を散策してまたしても紀伊國屋書店へ。今回の目的は、2階のイノダコーヒーでホットコーヒーを飲むためである。美味しいコーヒーを飲みながらぼーっとしたり考え事をするのは贅沢な時間である。
 新撰組と戦国武将の本を発見。なかなか面白そう。回し読みして意見を言い合える仲間が近くにいればもっといいのだが、現住地に引っ越してきてからそういう仲間がいない。函館が懐かしい。
 大丸地下で弁当を買ってホテルへ。夜食は軽めで十分である。頭痛はほぼおさまっていた。
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(3日目)
 最終日の朝、ホテルの朝食は和食にした。白飯に生玉子、イカの塩辛、佃煮、肉じゃがなどを食す。普段のしょぼい朝食とは違い、お腹いっぱいである。
 大丸の地下で食材を買って帰路につくことにする。ホテルをチェックアウトして駐車場の入り口まで来たが、まだ開いていない。しばらく待つことになった。ずっとiPODで音楽を聴いていた。シャッフル再生にしているのでいろんな曲がかかる。最近聴いていなかった曲も多い。新垣勉なんて最近全然聴いていなかったのだが、改めて聴いてみるといいものだ。いっしょになって口ずさむ。
 駐車場が開き、地下に進む。どこにでも駐め放題の状況で、一番階上に上りやすい位置にする。地下1階に行くが、大丸そのものが開店していない。仕方なく紀伊國屋書店に行くが、ここも入り口ロビーが開いているのみ。しばらくそこのベンチで過ごしたあと、紀伊国屋が開店。当然のように店内に入る。
 本来の目的は大丸の地下で食料を買うことである。それを忘れるところだった。和総菜とパン、和菓子を買う。デパ地下によくあるジューススタンドで大好きなグレープフルーツジュースを飲む。買うべきものはもう無い。いよいよ帰路である。
 僕の車にはカーナビなどという高級なものは無い。そもそも頭の中に地図を作る楽しさは機械の便利さでは上回れない。地図を確認して、大体の方向で道央道の方向へと進む。市内中心部では渋滞に巻き込まれるも、その後は順調。しかし、一向に道央道の入り口にたどり着けない。信号待ちで地図を再確認する。方向は間違っていない。
 ふと見れば、ガソリンの残量が少ない。高速に乗るまでには給油したい。入り口付近まで来るが、ガソリンスタンドが見あたらない。高速の入り口方向から少し外れたところにあったので満タンに給油する。これでまぁ、大丈夫だろう。
 「高速入口は300m先を右折」との表示がある。目測でそれと思われる交差点で右折する。行けども行けども高速の入口は無い。北星学園大学の前に来てしまい、道を間違えたことを悟り、引き返す。もう一つ先の交差点が正解であった。
 ここからは道央道を走り、千歳恵庭ジャンクションで道東道に入る。夕張ICで降りたところからは一般道。初めて通る道は気をつけるべきことが多いが、楽しいものである。山道を行くと、非力な軽自動車の悲哀を感じる。普通車がスイスイ進んでいるのに、トラックの次にしんどそうに走るのである。
 初めて見る地名を目にする。「楓」「占冠」など、「あの地名はここだったのか」と感じ入る。JR線と並行して走る部分では釧路方面行きの特急を見た。鉄道の旅もしたいものだ。
 「道東道はここを左折」の表示があった。道東道は分断されて開通しており、一旦降りてまた乗る形になる。その交差点を左折する。するとすぐに「道東道40km」の表示が。「40km先?」 距離に驚くというよりも、曲がる前に見た表示ではすぐにでも道央道があるような雰囲気だったのでそちらの方に驚く。北海道の道に慣れると、40kmはごく近い距離に感じられる。3ケタになってようやく「ちょっとかかるかな」と思うのである。
 無事道東道に乗って、帯広に向かう。豚丼を食すためである。(別項参照) 十勝平野は真っ平らで広い。広い広いと聞いてはいたがやっぱり広くて平坦だ。
 帯広から釧路までは120km。なんとなくの感覚で予定時間を計算する。途中で休憩を取るとしてどれくらいに着くか。国道に乗ればそれでとりあえずの目的地である釧路のジャスコに着く時刻は5時ぐらいか。
 音楽を聴きながらドライブをしていく。最後の休憩地点で地図を確認する。このまま進んで、この交差点で曲がればいいはずだ。ところが油断したのか地図を見誤ったのか、予想外の道路に入ってしまう。表示を手がかりにして大体のところを進む。雰囲気的にこれで合っていると確信してしばらくして看板が見えてきた。
 懐かしいJUN SKY WALKER(S)の「声がなくなるまで」がiPODから流れてきたところで、到着。食料の買い物をする。
 ここから後は毎月1回、毎週1回、毎日通る道である。全行程の9割を超えたところから気のゆるみがでないように慎重に運転する。外気温が下がって路面はところどころ凍結しているのがわかる。運転は慎重さを高めていく。
 自宅に着いて、駐車スペースに車を駐める。ホッとした瞬間、氷で滑りそうになった。全行程の99.99%ぐらいでも、油断大敵なのである。

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この記事へのコメント

sophia
2009年03月23日 09:43
自分も北海道を旅した気分になりました!
(実際はまだ未踏の地ですが)
素敵な札幌の過ごし方と思いましたよ。
「佐伯祐三」ぜひいらして下さい!
私が日本人で一番好きな画家です。
2009年03月23日 19:20
北海道はいいところです。一度是非いらしてください。

佐伯祐三展ではユトリロの作品も展示されるとのこと。ますます行きたくなりました。

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